無いような調子で答えた。幸作は豊世のことを「御新造」と言わないで、「姉様」と呼ぶように成っていた。
「母親《おっか》さんもどんなにか御待兼でしたよ」
 とお島は客を款待顔《もてなしがお》に言った。この若い細君は森彦の周旋で嫁《かたづ》いて来た人で、言葉|遣《づか》いは都会の女と変らなかった。
「もう、それでも、皆な帰るぞなし」とお仙は叔父の方を見た。
 遅く着いた客の前には、夕飯の膳が置かれた。三吉が旅の話をしながら馳走《ちそう》に成っていると、そこへお種と豊世が急いで帰って来た。お種は提灯《ちょうちん》の火を吹消して上った。三吉と相対《さしむかい》に、炉辺の正面へドッカと坐ったぎり、姉は物が言えなかった。
「叔父さん、真実《ほんとう》によく被入《いら》しって下さいましたねえ」と豊世は叔父に挨拶《あいさつ》して、やがてお仙の方を見て、「お仙ちゃん、母親さんに御湯でも進《あ》げたら好いでしょう。今夜は叔父さんが御着きに成るまいと思っていらしったところへ、急に御見えに成ったものですから、母親さんは嬉しいのと――」
 お種はいくらか蒼《あお》ざめて見えた。お仙のすすめる素湯《さゆ》を一口飲ん
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