で、両手を膝《ひざ》の上に置きながら、頭を垂れた。
ややしばらく経った後で、
「三吉、俺は何事《なんに》も言いません――これが御挨拶です」
とお種は大黒柱を後にして言った。
古めかしい奥座敷に取付けられた白い電燈の蓋《かさ》の下で、三吉は眼が覚《さ》めた。そこは達雄の居間に成っていたところで、大きな床、黒光りのする床柱なぞが変らずにある。庭に向いた明るい障子のところには、達雄の用いた机が、位置まで、旧《もと》の形を崩さないようにして置いてある。黄色い模様の附いた毛氈《もうせん》の机掛は、色の古くなったままで、未だ同じように掛っている。
年をとったお種は、旅に来て寝られない弟よりも、早く起きた。三吉が庭に出て見る頃は、お種は箒《ほうき》を手にして、苔蒸《こけむ》した石の間をセッセと掃いていた。
「こんな山の中にも電燈が点《つ》くように成りましたかネ」と三吉が言った。
「それどこじゃ無いぞや。まあ、俺と一緒に来て見よや」
こうお種は寂しそうに笑って、庭伝いに横手の勝手口の方へ弟を連れて行った。以前土蔵の方へ通った石段を上ると、三吉は窪《くぼ》く掘下げられた崖《がけ》を眼下《め
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