月の下旬には、三吉は豊世からも絵葉書を受取った。
「其後、叔父様、叔母様には御変りもなく候《そうろう》や。国へ帰りて早や一月にも相成り候。こちらも思うように参らず、留守宅のことも案じられ、一日も早く東京へ参りたく候――」
 と細い筆で書いてある。
 秋も末に成って、幸作からは彫刻の出来上ったことを報知《しら》して来た。そこそこに三吉は旅の仕度《したく》を始めた。姉の様子も心に掛るので、諏訪《すわ》の方から廻って、先《ま》ず橋本の家へ寄り、それから自分の生れ故郷へ向うことにした。森彦や正太は名古屋に集っている。序に、帰りの旅は二人を驚かそうとも思った。お雪も夫の手伝いでいそがしかった。お種のことや、幸作夫婦のことや、未だ郷里《くに》に留まっている豊世のことなぞが、取散《とりちらか》した中で夫婦の噂《うわさ》に上った。
「橋本の姉さんも、親で苦労し、子で苦労し――まだその上に――最早《もう》沢山だろうにナア」
 と夫の嘆息する言葉を聞いて、お雪も姉の一生を思いやった。
 家を出て、三吉は飯田町の停車場《ステーション》へ向った。中央線は鉄道工事の最中で、姉の許《ところ》まで行くには途中一晩泊
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