うと、何だか感傷の情に堪《た》えない』――なんて」 
 それを聞いて、豊世はお雪と微笑《えみ》を換《かわ》した。名古屋から送るべき筈《はず》の金も届かないことを、心細そうに叔父叔母の前で話した。
 二階から見える町家の屋根、窓なぞで、湿っていないものは無かった。空には見えない雨が降っていた。三人は、水底《みなそこ》を望んでいるような、忍耐力《こらえじょう》の無い眼付をして、時々話を止《や》めては、一緒に空の方を見た。どうかすると、遠く濡《ぬ》れた鳥が通る。それが泳いで行く魚の影のように見える。
「豊世さん――一体貴方は向島のことをどう思ってるんですか」三吉が切出した。
「向島ですか……」と豊世は切ないという眼付をして、「何だか私は……宅に捨てられるような気がして成りませんわ……」
「馬鹿な――」
「でも、叔父さんなぞは御存《ごぞんじ》ないでしょうが、宅でまだ川向に居ました時分――丁度私は一時|郷里《くに》へ帰りました時――向島が私の留守へ訪ねて来て、遅いから泊めてくれと言ったそうです。後で私はそのことを先《せん》の老婆《ばあや》から聞きました。よく図々《ずうずう》しくも、私の蒲団《ふと
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