トフォムへと急いだ。
「種ちゃんも、新ちゃんも、老爺さんに左様ならするんだよ」
 と三吉は列車の横に近く子供を連れて行った。お雪は新吉を抱上げて見せた。
 白い髯《ひげ》の生えた老人の笑顔が二等室の窓から出た。老人は窓際につかまりながら、娘や孫の方をよく見たが、やがて自分の席に戻って、暗然と首を垂れた。駅夫は列車と見送人の間を馳《は》せ歩いた。重い車の廻転する音が起った。
「阿爺《おとっ》さんも――ひょっとすると、これが東京の見納めだネ」
 と三吉は、妻と一緒に見送った後で、言った。


 五月に入っても、未だ正太は遊んでいた。森彦の方は、新しい事業に着手すると言って、勇んで名古屋へ発《た》って行った。
「正太さんもどうか成らないか。ああして遊ばせて置くのは、可惜《おし》いものだ」と三吉は心配そうにお雪に話して、甥《おい》の様子を見る為に、駒形の方へ出掛けた。
 例の石垣の下まで、三吉は歩いた。正太の家には、往来から好く見えるところに、「貸二階」とした札が出してある。何となく家の様子が寂しい。三吉が石段を上って行くと、顔を出した老婆《ばあさん》まで張合の無さそうな様子をしていた。
 正
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