と三吉は、時々町中に佇立《たたず》んで、子供の歩いて来るのを待った。幾羽となく空を飛んで来た鳥の群が、急に町の角を目がけて、一斉に舞い降りた。地を摺《す》るかと思うほど低いところへ来て、鳴いて、復た威勢よく舞い揚った。チリヂリバラバラに成った鳥は、思い思いの軒を指して飛んだ。
「最早|燕《つばめ》が来る頃に成りましたかネ」
と三吉は立って眺めた。
電車で上野の停車場《ステーション》まで乗って、一同は待合室に汽車の出る時を待った。老人はすこしも静止《じっと》していなかった。どうかすると三吉の前に立って、若い者のような声を出して笑った。
お雪の側には、二人の子供がキョロキョロした眼付をして、集って来る旅客を見ていた。老人はその方へ行った。かわるがわる子供の名を呼んで、
「皆な温順《おとな》しくしてお出――復た老爺《おじい》さんが御土産《おみや》を持って出て来ますぜ」
「名倉の老爺さんが復た御土産を持って来て下さるトサ」とお雪は子供に言い聞かせた。
「この老爺さんも、未だ出て来られる……」
こう老人はお雪を見て言って、復た老年らしい沈黙に返った。
発車の時間が来た。三吉夫婦はプラッ
前へ
次へ
全324ページ中250ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング