方ですか」
「ええ、毎年一度や二度は出て来なけりゃ成りません」と勉は商人らしい調子で言った。「時に小泉さん、※[#「※」は「○の中にナ」、189−6]の兄さんから御言伝《おことづけ》がありましたが、貴方の御宅でも女中が御入用《おいりよう》だそうですから――近いうちに一人連れて御出掛に成るそうです」
「そうですか、そいつは難有《ありがた》い。名倉の兄さんもどうしてますかネ。相変らず御店の方ですかネ」
「大将も多忙《いそが》しがっています」
 こんな調子で、三吉は打解けて話した。彼はお雪を傍へ呼んで、勉を款待《もてな》させて、復た正太の居る方へ上って行った。
「ええ、福ちゃんの旦那さんです。彼方《あっち》の方の人達は大阪の商人《あきんど》に近いネ。皆な遣方《やりかた》がハゲしい」
 と三吉は正太の前に復《もど》って言った。
 未だ正太は思わしい仕事も無く、ブラブラしていた。骨を折って口を見つけに飛び歩こうともしていなかった。彼はいくらか窶《やつ》れても見えた。謡《うたい》の会の噂、料理の通、それから近く欧洲を漫遊し帰って来たある画家の展覧会を見たことなど、雪の日らしい雑談をした後で、正太は
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