ち》の状態じゃ、復た前と同じことに成りゃしないか……それに、僕だって、君、ヤリキレやしないよ……」
と言いかけて、暫時《しばらく》三吉は聞耳を立てた。階下《した》では老人の咳払《せきばらい》が聞える。
「名倉の阿爺《おとっ》さんなぞは、君、今に僕が共潰《ともつぶ》れに成るか成るかと思って、あの通り熟《じっ》と黙って見てる……決して僕を助けようとはしない。実に、強い人だネ。僕もまた、痩我慢《やせがまん》だ。仕事のことであの阿爺さんに助けられても、暮し向のことや何かで助けてくれと言ったことは無い。ああして、下手に助けないで、熟《じっ》と黙って見てる――あそこはあの阿爺さんの面白いところさネ」
その時、表の戸を開けて入って来る客の声がした。階下では皆なの話声が起った。
「ああ、※[#「※」は「ひとがしら+ナ」、188−18]さんだ」
と三吉が正太の顔を見ながら言っているところへ、お雪はそれを告げに来た。三吉は正太に会釈して置いて、一寸《ちょっと》階下へ降りた。
老人や母や勉は長火鉢の周囲《まわり》に集っていた。三吉は友達に話し掛けるような調子で、勉に話し掛けた。
「へえ、今度も商用の
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