りか……あれで、叔父さん、榊君の遊び方と私の遊び方とは全然《まるっきり》違うんです……先生の恋には、選択は無い。非常に物慾の壮《さか》んな人なんですネ……」
 電車が両国の方から恐しい響をさせてやって来たので、しばらく正太の話は途切れた。やがて、彼は微笑《ほほえ》んで、
「そこへ行くと、私は選む……一流でないものは、妓《おんな》でも話せないような気がする……私は交際《つきあい》で引手茶屋なぞへ行きましても、クダラナい女なぞを相手にして、騒ぐ気には成れません。隣室《となり》へ酒を出して置いて、私は独《ひと》りで寝転《ねころ》びながら本なぞを読みます。すると茶屋の姉さんが『橋本さん、貴方は妙な方ですネ』なんて……」
 二人は電車の音のしないところへ出た。その辺は直樹の家に近かった。昔時《むかし》、直樹の父親が、釣竿《つりざお》を手にしては二町ばかりある家の方からやって来て、その辺の柳並木の陰で、僅《わず》かの閑《ひま》を自分のものとして楽んだものであった。その人が腰掛けた石も、河岸の並木も大抵どうか成って了った。柳が二三本残った。三吉と正太は立って眺めた。潮が沖の方から溢《あふ》れて来る時
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