オジャンでサ」
「そんな人の悪いことを為《す》るかねえ。手を携えてやった味方同志じゃないか」
「そりゃ、叔父さん、相場師の社会と来たら、実に酷《ひど》いものです。同輩を陥入《おとしい》れることなぞは、何とも思ってやしません。手の裏を反《かえ》すようなものです……苟《いやし》くも自己の利益に成るような事なら、何でも行《や》ります……自分が手柄をした時に、そいつを誇ること、他《ひと》の功名を嫉《ねた》むこと、それから他《ひと》の失敗を冷笑すること――親子の間柄でも容赦はない……相場師の神経質と嫉妬心《しっとしん》と来たら、恐らく芸術家以上でしょう。」
 正太は叔父の心当りの人で、もし兜町《かぶとちょう》に関係のある人が有らば、紹介してくれ、心掛けて置いてくれ、こんなことまで頼んで置いて、叔父と一緒に石段の傍を離れた。
 二人は河口の方へ静かに歩るいて行った。橋の畔《たもと》へ出ると、神田川の水が落合うところで、歌舞歓楽の区域の一角が水の方へ突出て居る。その辺は正太にとっての交際場裏で、よく客を連れては遊興にやって来たところだ。「橋本さん」と言えば、可成《かなり》顔が売れたものだ。「しばらく
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