と俺は可笑《おか》しく成っちまう……」
「でも、男の人の方が可羨《うらやま》しい。二度と女なんかに生れて来るもんじゃ有りません」
夕日が輝いて来た。食堂の玻璃窓は一つ一つ深い絵のように見えた。屋外《そと》の町々は次第に薄暗い空気の中へ沈んで行った。やがて夫婦はこの食堂を下りた。物憂い生活に逆《さから》うような眼付をしながら、三吉は満腹した「妹」を連れて家の方へ帰って行った。
八
駒形《こまがた》から川について厩橋《うまやばし》の横を通り、あれから狭い裏町を折れ曲って、更に蔵前の通りへ出、長い並木路を三吉叔父の家まで、正太は非常に静かに歩いた。
叔父は旅から帰って来た頃であった。正太は入口の庭のところに立って声を掛けた。
「叔父さん、御暇でしたら、すこし其辺《そこいら》を御歩きに成りませんか」
「御供しましょう――しかし、一寸《ちょっと》まあ上り給えナ」
こう答えて、三吉は甥《おい》を下座敷へ通した。
家には客もあった。お雪の父。この老人は遠く国から出掛けて、三吉の家で年越《としこし》した母と一緒に成りに来た。それほど長く母も逗留《とうりゅう》していた。
「
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