しいような人が有るかネ。ホラ、黒縮緬《くろちりめん》の羽織を着て、一度お前の許《とこ》へ訪ねて来た人が有ったろう。あの人も見違えるほどお婆さんに成ったネ」
「多勢子供が有るんですもの……」とお雪は思出したような眼付をして、スウプを吸った。
「旦那に仕送りするなんて言って、亜米利加《アメリカ》へ稼《かせ》ぎに行った人もどうしたかサ。そうかと思えば、旦那と子供を置いて、独りで某処《どっか》へ行ってる人もある……妙な噂があるぜ、ああいう人がお前には好いのかネ」
「でも、あの人は感心な人です」
「そうかナア……」
 ボオイが皿を取替えて行った。しばらく夫婦は黙って食った。
「芝に居る人はどうなんかネ」と復《ま》た三吉が言った。「よくお前が遊びに行くじゃないか」
「あの人も旦那さんが弱くッて……平常《しょっちゅう》つまらない、つまらないッて、愚痴ばかしコボして……」
「何と言っても、女は長生するよ。直樹さんの家を御覧な、老祖母《おばあ》さんが一人残ってる。強い証拠だ。大きな、肥《ふと》った体躯《からだ》をした他《よそ》の内儀《おかみ》さんなぞが、女というものは弱いもんですなんて、そんなことを聞く
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