、三吉は正太と連立って、もう一遍橋の畔《たもと》まで出て見た。提灯《ちょうちん》や万燈《まんどう》を点《つ》けて帰って行く舟を見ると、中には兜町方面の店印をも数えることが出来る。急に正太は意気の銷沈《しょうちん》を感じた。叔父と一緒に引返した。
遅く成ったので、花火を見に来た娘達は分れて泊ることに成った。お俊とお絹は正太夫婦に連れられて行った。三吉の家には、お延、お幾が残った。
町中の夏の夜。郊外では四月《よつき》五月《いつつき》も釣る蚊帳《かや》が、ここでは二十日か、三十日位しか要《い》らない。でも、毎年のように蚊が増《ふ》えた。その晩も皆な蚊帳の内へ入った。
ふと、三吉が眼を覚ました頃は、家のものは寝静まっていた。蚊の声がウルサく耳について、しばらく彼は眠られなかった。枕頭《まくらもと》の方では、乳臭い子供の香《におい》をたずねると見え、幾羽となく集って来ていた。蚊帳の内にも飛んでいた。三吉は床を離れた。蝋燭《ろうそく》とマッチを探って来て、火を点《とも》した。妻子《つまこ》はいずれもよく寝ていた。緑色の麻蚊帳が明るく映っても、目を覚まして声を掛けるものは無かった。
「種
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