色が、夜の空に映ったり消えたりした。二人が腰掛けている涼台から、その光を望むことが出来た。三吉は、多勢子供を失ってから、気に成るという風で、時々自分の家の内を覗《のぞ》きに行って、それから復《ま》た正太の話を聞きに来た。
 どうかすると、三吉の心は空の方へ行った。半ば独語《ひとりごと》のように、
「家というものはどうしてこう煩《わずらわ》しいもんでしょう。僕のところなぞは、もうすこしウマく行きそうなものだがナア……」
 こう正太に話して聞かせた。
 そのうちに、豊世やお雪は手を引き合いながら、明るい軒燈《ガス》の影を帰って来た。二人とも下町風の髪を結って、丁度背も同じ程の高さである。お雪は三十を一つ越し、豊世もやがて三十に近かった。お雪が堅肥りのした肩や、乳の張った胸のあたりに比べると、豊世の方はやや痩《や》せていたが、それでも体格の女らしく発達したことは、二人ともよく似ていた。二人は話し話し涼台の方へ近《ちかづ》いた。
 間もなく娘達も手を引いて帰って来た。私語《ささや》く声、軽く笑う声が、そこにも、ここにも起った。知らない男や女は幾群となく皆なの側を通過ぎた。
 仕掛花火も終った頃
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