ちゃんはあんなところへ行って、転《ころ》がってる――仕様が無いナア、皆な寝相《ねぞう》が悪くて」
 こう三吉は、叱《しか》るように言って見て、あちこちと子供の上を跨《また》いで歩いた。
 蚊を焼きながら、三吉はお雪の枕許《まくらもと》へ来た。まだお雪は知らずに寝ていた。見ると、何等《なん》の記憶に苦むということも無いような顔付をして、乳呑児の頭の方へ無心に母らしい手を延ばしながら、静かに横に成っていた。三吉は燭台《しょくだい》を妻の寝顔に寄せた。そして、お雪の心を読もうとするような眼付をして、猶《なお》よく見た。何物《なんに》も変ったものが蝋燭の光に映らなかった……深い眠はお雪の身体を支配しているらしかった。顔面《かお》のどの部分でも、眠っていないところは無かった。白い腕までも夢を見ていた。
 蚊帳の外まで燭台を持って廻った後、三吉は火を吹き消した。復た自分の床に入って、枕に就《つ》いた。
 翌朝《よくあさ》は、お延やお幾が種夫を間に入れて、三吉夫婦と一緒に食事した。新吉もその傍で、下婢《おんな》に食べさせて貰った。
「いやです、父さん――人の顔をジロジロ見て」とお雪は食いながら言った
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