めた。
「塩瀬の店も駄目だそうだネ」と彼が言って見た。
「豊世からでも御聞きでしたか」と正太は叔父の方をキッと見て、「私が兜町へ入る頃から、塩瀬というものは実は駄目だったんです。外部を弥縫《びほう》していましたから、店に使われる者すら知らなかった。幹部へ入ってみて、それが解った。いよいよあの店も致命傷を負いました。銀行からは取付《とりつけ》を食う、得意は責めて来る――そう成ったら、実にミジメなものですよ。多分、あの店は、一旦閉めて、更に広田というものの名義で小さく始めることに成るでしょう。私なぞは、今までの行き掛り上、相談には乗ってやっていますが、殆《ほと》んど手を引いたようなものです」
すべての劃策《かくさく》は水泡に帰した、と正太は歎息した。彼は仲買人として、別に立つ方法を講じなければ成らない、とも言った。
「榊《さかき》君はどうしたろう」と三吉は思出したように。
「あの人も失敗して、郷里《くに》へ帰ったきりです。再挙を計る心は無さそうです」
こんな話をしていると、階下《した》では娘達の笑声が起った。二人は一緒に階梯を下りた。お俊、お延、お絹を始め、お雪が末の妹のお幾も集って来
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