の煙が町の空に浮んだ。三吉は二階の縁側に出て、往来へ向いた簾《すだれ》の影から眺《なが》めた。
「……人妻などに成るものではないと、よく貴方から言って寄《よこ》したから、ひょっとかすると最早名倉さんの方へ帰っているかとも思うが……試みにこの手紙を進《あ》げる……」
こう三吉は心に繰返して見た。これはお雪が旧《ふる》い男の友達から、彼女へ宛《あ》てて寄した手紙の中の文句で。
言うに言われぬ失望が、ふとこの手紙を読んだ時から、三吉の胸に起って来た。長く艱難《かんなん》を共にしながら、これ程妻が自分を知らずにいたか、と彼は心にナサケなく思った。のみならず、全く心の持方の違った、気質も異なれば境遇も別な、こういう他人の手紙の中から、どう妻の心を読んだら可いか、第一それからして思い迷った。
ポンポン音がする。煙は風に送られて、柳の花のように垂下った。三吉はションボリ立って眺めていた。
「叔父さん――」
と声を掛けて、正太がズカズカ階梯《はしごだん》を上って来た。
急に三吉は沈鬱《ちんうつ》な心の底から浮び上ったように笑った。正太と一緒に坐って、兜町《かぶとちょう》の方の噂《うわさ》を始
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