い。それも交際《つきあい》で止《や》むを得ない時ばかり。一度はMさんの出て来た時、一度は――」
「二度と断ったところはよかった」と三吉が笑出した。
「いえ、正直な話サ」
 森彦は三吉を睨《にら》むようにして言ったが、終《しまい》には自分でも可笑しく成ったと見えて、反返《そりかえ》って笑った。
「姉さん」と森彦はお種の方を見て、「俺はこういう話を覚えているが――貴方達《あなたがた》が未だ東京に家を持ってる時分、お仙が二階から転がり落ちて、ヒドク頭を打った――それを貴方達は知らずに寝ていたということだが――」
「そんなことは、虚言《うそ》だ」とお種は腹立たしげに打消した。
「とにかく、今夜のような話は、為る方が可いネ」と三吉が正太に言った。
「稀《たま》にはこういう話も聞かんと不可《いかん》」正太も元気づいた。
 お種は弟を顧みて、「三吉、お前は私のことを……旦那《だんな》に逢って見る積りで、今度出て来たんだろうなんて、そう言ったそうなネ……」と他事《ひとごと》のように言った。
「まあそんな話が出たことも有りました」と三吉は微笑んで、「しかし、姉さん、子のことも考えんけりゃ成りませんからネ
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