後には、白い前垂を掛けた女髪結が立って、しきりと身体を動かしていた。
「叔父さん、私も母親さんの御供をして、一寸|郷里《くに》まで行って参ります。実は行く前に、御相談したいことも有りますし、私の方から今伺おうと思っていたところなんです」
 正太は叔父の顔を見て、丁度好いところへ来てくれたという風に言った。
 三吉、正太の二人は連立って、河の見える二階へ上った。窓の扉《と》だけ赤く塗った河蒸汽が、音波を刻んで眺望の中に入って来た。やがて川上の方へ通過ぎた。
 三吉は薄く濁った水を眺めて、
「姉さんも、何事《なんに》も言出さずに帰って行くものと見えるネ……時に、正太さん、相談したいというのは何ですか」
 と叔父に言われて、しばらく正太は切出しかねていた。金の話であった。郷里《くに》に居る正太の知人で、叔父の請判《うけはん》があらば、貸出しそうなものが有る。商法の資本《もとで》として、二千円ばかり借りて来たい。迷惑は掛けないから、判だけ捺《お》してくれ。
「実は――この話は、母親さんからこうこういう人があると、聞出したのが元なんです」と正太は折入って三吉に頼んだ。
 お種は髪が出来て上って来
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