返した。時々、彼は可恐《おそろ》しげな眼付をして、豊世の顔を睨《にら》みつけた。
「あぶないあぶないと平素《ふだん》から思っていたが、これ程とは思わなかった」正太はこんな風に妹のことを言って見た。
「一体、私が子供なぞを連れてやって来たのが悪かった」と三吉が言った。
お種は引取って、「そんなことを言えば、私がお仙を連れて出て来たのが悪いようなものだ。いや、誰が悪いんでも無い。みんなあの娘《こ》が持って生れて来たのだぞや。どんなことが有ろうとも、私はもう絶念《あきら》めていますよ。それよりは、働けるものが好く働いて、夫婦して立派なものに成ってくれるのが、何よりですよ」
「私はネ」と正太は叔父の方を見て、「事業《しごと》と成ると、どんなにでも働けますが――使えば使うだけ、ますます頭脳《あたま》が冴《さ》えて来るんです――唯、こういう人情のことには、実際閉口だ」
「正太もまた、こんなことに凹《へこ》んで了うようなことじゃ不可《いけない》」
とお種は健気《けなげ》にも、吾児《わがこ》を励ますように言う。
「ナニ、これしきのことに凹んでたまるもんですか。私の頭脳の中には、今塩瀬の店の運命があ
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