れていなかった。
「これはまあ何という事だ」
というお種の言葉を聞捨てて、三吉は二階へ駆上った。続いてお種も上って来た。
雨戸を開けて見ると、燃え上る河岸《かし》の土蔵の火は姉弟の眼に凄《すさま》じく映った。どうやら、一軒で済むらしい。見ているうちに、すこし下火に成る。
「もう大丈夫」
と正太も階下《した》から上って来た。三人は無言のまま、一緒に火を眺めて立っていた。雨戸を閉めて置いて、三人は階下へ下りた。まだ往来は混雑していた。石段を上って来て、火事見舞を言いに寄るものもあった。正太は心の震動《ふるえ》を制《おさ》えかねるという風で、
「叔父さん、済みませんが下谷《したや》の警察まで行って下さいませんか……浅草の警察へは今届けて来ました」
「お仙も」とお種は引取って、「ああいう神様か仏様のようなやつだから、存外無事で出て来るかも知れないテ」
「お仙ちゃんは、ここの番地を覚えていますまいね」と三吉が聞いた。
「どうも覚えていまいテ」とお種は歎息する。
「なかなか車に乗るという智慧《ちえ》は出そうもない――おまけに、一文も持っていない」と正太も附添《つけた》した。
三吉は思い付い
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