の内へ入れてから言った。「お前は今夜、是方《こっち》で泊ってくれるだろうネ」
「ええ、とにかく行って坊主を置いて来ます――それから復たやって来ましょう」
「ああそうしておくれ。弱い子供だから、お雪さんが心配すると不可《いけない》。ワンワンも持たせてやりたいが、可いわ、私がまた訪ねる時にお土産《みや》に持って行かず」
 三吉は眠そうな子供を姉の手から抱取った。
「坊ちゃまのお下駄《げた》はいかがいたしましょう」と老婆が言葉を添える。
「ナニ、構いませんから、新聞に包んで私の懐中《ふところ》へ捩込《ねじこ》んで下さい」
 こう三吉は答えて、「種ちゃん、吾家《おうち》へ行くんだよ」と言い聞かせながら、子供を肩につかまらせて出た。種夫は眠そうに頭を垂れて、左右の手もだらりと下げていた。
「まあ御可愛そうに、おねむでいらッしゃる」と老婆が言った。
 三吉が自分の家へ子供を運んで置いて、復た電車で引返して来た頃は、半鐘が烈《はげ》しく鳴り響いていた。細い路地や往来は人で埋まった。お仙が居なく成ったというさえあるに、加《おまけ》に火事とは。三吉は仰天して了《しま》った。火は正太の家から半町ほどしか離
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