もよくあれまでに漕付《こぎつ》けましたよ。どの位手数の要《かか》ったものだか知れません」
「そうさ――どうも見たところが弱そうだ」
姉弟《きょうだい》が話の糸口は未だ真実《ほんとう》に解《ほど》けなかった。急に、正太は階下《した》から上って来て、洋燈の置いてあるところに立った。
「母親さん、お仙ちゃんが居なくなったそうです」
こう坐りもせずに言った。思わず三人顔を見合せた。
お仙を探しに行った三吉が、町を一廻りして帰って来た頃は、正太も、豊世も、お種も出て居なかった。家には、老婆《ばあさん》一人|茫然《ぼんやり》と留守をしていた。
「お仙ちゃんは未だ帰りませんか」
と庭から声を掛けて、三吉は下座敷へ上って見た。壁に寄せて座蒲団《ざぶとん》の上に寝かして置いた種夫の姿も見えなかった。
「坊主は?」
「坊ちゃまですか。めんめを御覚《おさま》しだもんですから、御隠居様が負《おん》ぶなさいまして、表の方へ見にいらッしゃいました」
夏の夜のことで、河の方から来る涼しい空気が座敷の内へ通っていた。三吉は水浅黄色のカアテンの懸った玻璃《ガラス》障子のところへ行って見た。そこから、石段の
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