おぼえ》があらすか。今度初めて東京を見るようなものだわい」
 種夫はすこしも静止《じっと》していなかった。部屋の内は正太の趣味で面白く飾ってあったが、子供はそんなことに頓着《とんじゃく》なしで、大切な道具でも何でも玩具にして遊ぼうとした。
「種ちゃん、いらッしゃい、豊世叔母ちゃんが負《おん》ぶして進《あ》げましょう――表の方へ行って見て来ましょうネ」
 と豊世は種夫を連れて、階下《した》へ行った。やがて、往来の方からお仙を呼ぶ声がした。
「お仙ちゃんも、そこいらまで一緒に見に行きませんか」
 豊世が誘うままに、お仙も町の夕景色を見に出掛けた。
 正太は母や叔父を款待《もてな》そうとして、階梯《はしごだん》を上ったり下りたりした。二階の縁側に近く煙草盆《たばこぼん》を持出して、三吉はお種と相対《さしむかい》に坐った。お種が広い額には、何となく憂鬱《ゆううつ》な色が有った。でも案じた程でも無いらしいので、三吉もやや安心して、亡くなった三人の子供の話なぞを始めた。山で別れてから以来《このかた》、お種は言いたいことばかり、何から話して可いか解らない程であった。
「房ちゃん達のことを思うと、種夫
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