言った。
「そうせまいか。二階で話さまいか」と言って、お種は子供を背中に乗せて、「お仙もいらっしゃい」
「母親さん、危う御座んすよ」と豊世は灯の点《つ》いた洋燈《ランプ》を持ちながら、皆なの後から階梯《はしごだん》を上った。
二階は、水楼の感じがすると、三吉が来る度《たび》に言うところで、隅田川《すみだがわ》が好く見えた。対岸の町々の灯は美しく水に映じていた。正太に似て背の高いお仙は、縁側の欄《てすり》に近くいて、母や叔父の話を聞こうとした。この娘の癖で、どうかすると叔父の顔に近く自分の処女《おとめ》らしい顔を寄せて、言い難い喜悦《よろこび》の情を表わそうとした。お仙は二十五六に成るとは見えなかった。ずっと若く見えた。
「どうだネ、お仙、三吉叔父さんにお目に掛ってどんな気がするネ」
と母に言われて、お仙は白い繊細《ほそ》い手を口に宛行《あてが》いながら、無邪気に笑った。
「彼女《あれ》は、どの位嬉しいか解《わから》ないところだ」とお種は三吉に言って聞かせた。「お前さん達のことばかり言い暮して来た。彼女が郷里《くに》へ連れられて行ったのは、六歳《むっつ》の時だぞや。碌《ろく》に記憶《
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