、その日の夕方から甥の家を訪ねることにした。種夫に着物を着更えさせて、電車で駒形《こまがた》へ行った時は、橋本とした軒燈《ガス》が石垣の上に光り始めていた。三吉は子供を抱き擁《かか》えて、勾配《こうばい》の急な石段を上った。
「種ちゃん、父さんと御一緒に――よく被入《いら》しって下さいましたねえ」と豊世が出て迎えた。
「坊ちゃま、さあアンガなさいまし」女中の老婆も顔を出した。
「こんな小さな下駄《かっこ》を穿《は》いて――」と復た、子の無い豊世がめずらしそうに言った。
間もなく、三吉はお種やお仙と挨拶《あいさつ》を交換《とりかわ》した。遠慮の無い種夫は、綺麗に片付けてある家の内を歩き廻った。お種は自分の方へ子供を抱寄せるようにして、
「種ちゃん――これが木曾《きそ》の伯母さんですよ。お前さんの姉さん達は、よくこの伯母さんが抱ッこをしたり、負《おん》ぶをしたりしたッけが……」と言って、お仙の方を見て、「お仙や、あのワンワンをここへ持って来て御覧」
お仙は、箪笥《たんす》の上にある犬の玩具《おもちゃ》を取出して、種夫に与えた。
「叔父さん、二階の方へいらしって下さい」と正太が先に立って
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