。朝日が、川の方から、家の前の石垣のところへ映《あた》っていた。それを眺《なが》めると、母や妹の旅立姿が彼の眼に浮んだ……日頃、女は家を守るものと定《き》めて、めったに屋敷の外へ出たことも無いお種――そういう習慣の人が、自分から思立って上京する気に成ったとは。正太は、あの深い屋根の下に※[#「※」は「足へん+宛」、第3水準1−92−36、128−5]《もが》き悶《あが》いていた母の生涯を思わずにいられなかった。
 塩瀬の店の車に乗って用達《ようたし》に馳廻《かけまわ》った後、正太は森彦叔父の旅舎《やどや》へ立寄り、それから引返して三吉叔父の家の前に車を停めた。丁度三吉は下座敷に居た。叔父の顔を見ると、正太は相場の思惑《おもわく》にすこし手違いを生じたことから、遣繰《やりくり》算段して母を迎える打開話《うちあけばなし》を始めた。
「へえ、お仙ちゃんを連れて? 姉さんも出て来るにはすこし早いナ」
 と三吉は首を傾《かし》げていた。
「叔父さんもそうお思いでしょう」と正太は不安らしく、「どうも母親《おっか》さんは……阿爺《おやじ》に逢うのを目的にして出て来る様子です。いろいろ綜合して、私も考
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