ど気の優しい、目下のものにも親切な人でしたよ」
「種々なことを聞いて見たいナア。ああいう気性の阿爺さんですから、女のことなぞはサッパリしていましたろうネ」
「ええ、ええ、サッパリ……でも、癇の起った時なぞは、どうかするとお末が母親さんや私達の方へ逃げて来ましたよ……お末という下婢《おんな》が家に居ましたあね」
「へえ、阿爺さんのような人でもそんなことが有りましたか」
 三吉は正太と顔を見合せた。誰かクスクス笑った。
 その晩は、三吉、正太夫婦なぞが起きていて、疲れた親子を横に成らせた。お倉は、遠い旅にある夫、他《よそ》へ嫁《かたづ》く約束の娘、と順に考えて、寝ても寝られないという風であった。心細そうに、お俊の方へ身体を持たせ掛けた。
「鶴ちゃんが死んで了えば、私はもう誰にも掛るものが無い――真実《ほんと》に、一人ぼッち」
「母親さん、そんなことを言うもんじゃ無くってよ」


「ヤア、ヤア――どうも御苦労様でした」
 お鶴の葬式が済んだ後で、三吉は正太を自分の家へ誘って来た。一緒に二階の部屋へ上った。
 お雪は夫の好きな茶を入れて持って来た。障子を開けひろげて、三吉は正太と相対《さしむか
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