た。豊世は俯向《うつむ》いて、萎《しお》れた。
お倉は娘の棺の方へ燈明の油を見に行った。復《ま》た皆なの方へ戻って来て、
「正太さんの所でも御越しに成ったそうですネ」
「ええ」と正太は受けて、「叔母さんも御淋《おさび》しく成りましたろうから、ちと御話に被入《いらし》って下さい。今度は三吉叔父さんと同じ川の並びへ移りました」
「三吉叔父さんは一度|被入《いらし》って下さいました」と豊世がお倉に言った。
「今度の家は好いよ」と三吉は正太を見て、「第一、川の眺望《ながめ》が好い」
「延ちゃんも姉さんと一緒に遊びにお出」と正太は娘達の方を振向いた。
土器《かわらけ》の燈明は、小泉を継がせる筈《はず》のお鶴の為に、最後の一点の火のように燃《とぼ》った。お倉は、この名残《なごり》の住居で、郷里《くに》の方にある家の旧い話を始めた。弟、娘、甥、姪などの視線は、過去った記憶を生命《いのち》としているような不幸な婦《おんな》の方へ集った。
お倉はよく覚えていた。家を堅くしたと言われる祖父が先代から身上《しんしょう》を受取る時には、銭箱に百文と、米蔵に二俵の貯《たくわ》えしか無かった。味噌蔵も空であ
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