ったところで、一寸手紙を書くからと言いながら、机に対《むか》っていそがしそうに筆を走らせた。やがてその手紙を読返して見て、封をして、三吉の方へ向くと同時に手を鳴らした。
「これは急ぎの手紙ですから、直に出して下さい」
 と森彦は女中に言附けて置いて、それから弟の顔を眺めた。
「今日はすこし御願が有ってやって来ました」
 こういう三吉の意味を、森彦は直に読むような人であった。「まあ、待てよ」と起上《たちあが》って、戸棚《とだな》の中から新しい菓子の入った鑵《かん》を取出した。
「貴方の方で宗さんの分を立替えて置いて頂きたいもんですがナア」と三吉は切出した。
「ホ、お前の方でもそうか」と森彦は苦笑《にがわらい》して、「俺は又、お前の方で出来るだろうと思って、未だお俊の家へは送れないでいるところだ――困る時には一緒だナア」
 二人の話は宗蔵や実の家の噂に移って行った。
「真実《ほんと》に、宗蔵の奴は困り者だよ。人間だからああして生きていられるんだ。これがもし獣《けだもの》で御覧、あんな奴は疾《とっく》に食われて了《しま》ってるんだ」
「生きたくないと思ったって、生きるだけは生きなけりゃ成りま
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