ナ」
三吉は二階から下りて来て、身仕度《みじたく》を始めた。お倉は未だ話し込んでいた。お雪は白足袋《しろたび》の洗濯したのを幾足か取出して見て、
「一二度外へ行って来ると、もうそれは穿《は》かないんですから、幾足あったって堪《たま》りませんよ」
こんなことを言って笑いながら、中でも好さそうなのを択《よ》って夫に渡した。三吉は無造作に綴合《とじあわ》せた糸を切って、縮んだ足袋を無理に自分の足に填《は》めた。
「姉さん」と三吉はコハゼを掛けながら、「満洲の方から御便は有りますか」
「ええ、無事で働いておりますそうです――皆さんにも宜《よろ》しく申上げるようにッて先頃も手紙が参りました」
「ウマくやってくれると可《よ》う御座んすがナア」
「さあ、私もそう思っています」
「まだ家の方へ仕送りをするというところまでいきませんかネ」
「どうして……でも、まあ彼方《あちら》に親切な方が有りまして、よく見て下さるそうです」
頼りないお倉は「親切な」という言葉に力を入れ入れした。嫂を残して置いて、三吉は家を出た。
森彦は旅舎《やどや》の方に居た。丁度弟が訪ねて行った時は、電話口から二階の部屋へ戻
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