せん……宗さんのも苦しい生活ですネ」
「いえ、第一、彼奴《あいつ》の心得方が間違ってるサ。廃人なら廃人らしく神妙にして、皆なの言うことに従わんけりゃ成らん。どうかすると、彼奴は逆捩《さかねじ》を食わせる奴だ……だから世話の仕手も無いようなことに成って了う」
「一体、吾儕《われわれ》がこうして――殆《ほと》んど一生掛って――身内のものを助けているのはそれが果して好い事か悪い事か、私には解らなく成って来ました。貴方なぞはどう思いますネ」
 森彦は黙って弟の言うことを聞いていた。
「吾儕が兄弟の為に計ったことは、皆な初めに思ったこととは違って来ました。俊を学校へ入れたのは、彼女《あれ》に独立の出来る道を立ててやって、母親《おっか》さんを養わせる積りだったんでしょう。ところが、彼女は学校の教師なぞには向かない娘に育って了いました。姉さんだってもそうでしょう、弱い弱いで、可傷《いたわ》られるうちに、今では最早|真実《ほんと》に弱い人です。吾儕は長い間掛って、兄弟に倚凭《よりかか》ることを教えたようなものじゃ有りませんか……名倉の阿爺《おやじ》なぞに言わせると、吾儕が兄弟を助けるのは間違ってる。借
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