小金の噂《うわさ》が出た。彼は正太の身の上をも深く案じ顔に見えた。
「実は御新造さんから手紙が来て、相談したいことが有ると言うもんですから、それで私も名古屋の方から廻って来ました」
「へえ、その為に君は出て来たんですか。そんなに大騒ぎしなくても可いことでしょう。豊世さんもあんまり気を揉《も》み過ぎる」
「何ですか心配なような手紙でしたから、大御新造には内証で」
「そう突《つッつ》き散《ち》らかすと、反《かえ》っていけませんよ」
その晩、幸作は若旦那の家の方へ寝に行った。
復たポカポカする季節に成った。三吉が家から二つばかり横町を隔てた河岸《かし》のところには、黄緑《きみどり》な柳の花が垂下った。石垣《いしがき》の下は、荷舟なぞの碇泊《ていはく》する河口で、濁った黒ずんだ水が電車の通る橋の下の方から春らしい欠伸《あくび》をしながら流れて来た。
この季節から、お菊やお房の死んだ時分へかけて、毎年のように三吉は頭脳《あたま》が病めた。子を失うまでは彼もこんな傷《いた》みを知らなかったのである。半ば病人のような眼付をして、彼は柳並木の下を往《い》ったり来たりした。白壁にあたる温暖《あ
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