る森彦へ宛《あ》てて、病人のことを電報で問合せた。都合して来いという返事が来た。何を措《お》いても、彼は名古屋の方へ行こうと思い立った。それをお雪にも話した。
 正太を見舞いに行く前の晩、三吉は種々なことで多忙《いそが》しい思をした。甥《おい》が病んでいることを、せめて向島の女にも知らせて遣《や》りたいと思った。言伝《ことづけ》でもあらばと思って、人を通して、電話で伝えさせた。小金も、その母親も、共に病床にあるということが、その時解った。
 こうして三吉は復《ま》た名古屋行の汽車に揺られて行くように成ったのである。彼が森彦の旅舎《やどや》へ着いたのは、日暮に近い頃であった。
 東京から見ると暑い空気の通う二階の窓のところで、兄弟は正太の病状を語り合った。病院の方へはお種も来ているとのことであった。森彦は片端から用務を処理するような口調で、橋本の姉が近年にない静粛な調子の人であることや、幸作からも便りがあって、もし彼の行商中に万一の事でもあったら、死体は名古屋で焼くように、そして遺骨として郷里の方へ送るように、と頼んで来たことなぞを話した。
「いかに言っても、これは早手廻しだ――しかし、好く書いてある」
 と森彦は幸作からの書面を弟に見せて、高い調子で笑った。
 翌朝、三吉は兄に伴われて病院の方へ行った。玻璃戸《ガラスど》のはまった長い廊下に添うた二階の一室に、橋本正太とした札が掲《か》けてあった。二間つづきに成って、一方に窓のある明るい室が患者の寝台《ねだい》の置いてあるところ、その手前が看護するものの部屋であった。そこで三吉は、お種や豊世とも一緒に成った。
 正太は、叔父達の来たことも知らずに、暗く黒ずんだ顔を敷布に埋めながら眠っていた。そのうちに大きな眼を開いて、驚いたように三吉の方を見た。
「オオ、眼が覚《さ》めたそうな。いくらかでも寝られて反《かえ》って可かった。三吉叔父さんも被入《いら》しって下すったよ」
 とお種は正太の枕許《まくらもと》へ行って、母らしい調子で言った。正太は半ば身を起して、叔父達に一礼したが、復た寝台の上に倒れた。痩《や》せ細った手で豊世を招いて、自分の口を指して見せる。やがて豊世が勧める水薬で乾き粘った口を霑《うるお》して、
「是非一度叔父さんに御目に掛って置きたいと思いまして……電報はすこし大袈裟《おおげさ》かとも思いましたが、わざ
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