から話しました」
豊世は切ないという眼付をして、「橋本の母親さんからは、早く名古屋の方へ行って、看病してやっておくれ、と言って来ますし……生家《さと》の母からは、また……是非|是方《こっち》へ帰って来いなんて……真実《ほんと》に、親達は、先《ま》ず自分の子の方のことを考えてますよ。でも、生家の母も、私が可哀想だと思うんでしょう……」
「正太さんも可哀想ですし、貴方も可哀想です」
と叔父に言われて、豊世は自分で自分を憐《あわれ》むように、
「私も、行って看病してやりますわ……今までだって、叔父さん、私の方で居てやったようなものですもの……」
「豊世さん――貴方がたは結婚なすってから、今年で何年に成りますネ」と三吉は巻煙草の灰を落しながら言出した。
「丁度十一年――」と豊世も過去ったことを思出したように。
「して見ると僕等よりは一年後でしたかねえ」
「たしか、橋本の番頭さんが薬を負《しょ》って吾家《うち》へ被入《いらし》って、あの時豊世さんのお嫁さんに被入《いら》しったことを伺いましたっけ」とお雪も言葉を添える。
「そうでしたねえ、あの時叔母さんからも御手紙なぞを頂きましたっけねえ」と豊世が言った。「真実《ほんと》に楽しいと思ったのは、結婚して一年ばかりの間でしたよ……それからもう家の内がゴタゴタゴタゴタし出して……母親さんは臥《ね》たり起きたりするように御成んなさる……そのうちにあの騒ぎでしょう」
お雪も微《かす》かな溜息《ためいき》を吐いた。
「何しろ、正太さんと私とは縁故の深い訳ですネ――」と三吉は話を引取った。「私達二人は小学校時代から一緒でしたからネ。尤《もっと》も級は違いましたが。私が八つばかりの時に東京へ修業に出される……あの頃は土耳古形《トルコがた》のような帽子が流行《はや》って、正太さんも房の垂下ったのを冠ったものでサ……あんな時分から一緒なんですからね」
「旧《ふる》い、旧い御馴染」と豊世は受けて、「叔父さんが仙台に被入《いら》しった時分、宅のことで書いて寄して下すった手紙が、昨年でしたか出て参りましたっけ。あれなぞを見ましても、余程《よっぽど》宅は皆さんに心配して頂いた人なんですネ」
「へえ、そんな手紙を進《あ》げましたかナア」
「なんでも宅の方針のことで、叔父さんの意見を聞きに上げたんでしょう……あんなに皆さんから心配された位ですから、
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