おとな》しく寝てるものを、そうッとして置くが可い」とお種は壁に寄せて寝かしてある一番|幼少《ちいさ》い銀造の顔を覗《のぞ》きに行った。
「どうです、姉さん、これが六人めですよ――随分出来も出来たものでしょう」
「お前さんのところでは、お雪さんも御達者だし、どうして未だ未だこれから出来ますよ」
 こんなことを傍で言われて、お雪はキマリが悪そうに茶戸棚《ちゃとだな》の方へ行った。
「真実《ほんと》に、子供があると無いじゃ、家の内が大違いだ」と言って、お種は正太の家のことを思い比べるような眼付をした。
 その日、お種は心易く振舞おう振舞おうとしていたが、どうかすると酷《ひど》く興奮した調子が出て来た。時にはそれが病的に聞えた。すこしも静止《じっと》していられないような姉の様子が、何となくお雪には気づかいであった。お種は狭い町中の住居《すまい》をめずらしく思うという風で、取散した勝手元まで見て廻ろうとするので、お雪はもう冷々《ひやひや》していた。
 姉を案内して、三吉は二階の部屋へ上った。日中《ひるなか》の三味線の音が、乾燥《はしゃ》いだ町の空気を通して、静かに響いて来た。
「姉さん、東京も変りましたろう」
 こういう弟の話を、お種は直に吾児《わがこ》の方へ持って行った。
「今度、出て来てみたら、正太の家には妙なものが掛けてある。何様とかの御護符《おふだ》だげナ。そして、一寸したことにも御幣を担《かつ》ぐ。相場師という者は皆なこういうものだなんて……若い時はあんな奴じゃなかったが……」
「しかし、正太さんはナカナカ面白いところが有りますよ。ウマくやってくれると宜《よ》う御座んすがネ」
「まあ、彼《あれ》は、阿爺《おとっ》さんから見ると、大胆なところが有るで――」
 お種は言い淀《よど》んで、豊世から聞いた正太と他の女との関係を心配そうに話した。
「アア向島の芸者のことですか」
「それサ」
「へえ、豊世さんは心配してるんですかネ。そんな話は、疾《とっ》くにどうか成ったかと思っていた」
「ところがそうで無いらしいから困るテ……豊世もあれで、森彦叔父さんなら何事《なん》でも話せるが、どうも三吉叔父さんは気遣《きづか》いだなんて言ってる」
 こうお種が言って笑ったので、三吉の方でも苦笑《にがわらい》した。
 お雪は姉の馳走《ちそう》に取寄せた松の鮨《すし》なぞを階下《した》から運ん
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