まいとか、天気に成れば何程工事が進んだろうとか、毎日言い合った。夫婦の心の内には、新規に家の形が出来て、それが日に日に住まわれるように成って行く気がした。


 夫婦は引越の仕度にいそがしかった。お雪は自分が何を着て、子供には何を着せて行こう、といろいろに気を揉《も》んだ。
「房ちゃん、いらっしゃい。着物《おべべ》を着てみましょう――温順《おとな》しくしないと、東京へ連れて行きませんよ」
 こう娘を呼んで言って、ヨソイキの着物を取出してみた。それは袖口を括《くく》って、お房の好きなリボンで結んである。お菊の方には、黄八丈の着物を着せて行くことにした。
「菊ちゃんは色が白いから、何を着ても似合う」
 と皆なが言合った。日頃親しくして、「叔父さん」とか「叔母さん」とか互に言合った近所の人達は、かわるがわる訪ねて来た。
「いよいよ御別れでごわすかナア」と学校の小使も入口の庭の処へ来て言った。
「何物《なんに》も君には置いて行くようなものが無いが、その鍬《くわ》を進《あ》げようと思って、とっといた」と三吉は自分が使用《つか》った鍬の置いてある方を指して見せた。
「どうも済みやせん……へえ、それ
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