居る方へ行った。お雪も自分で束髪を直しているところであった。
「母さん」とお房は真白に塗られた頬を寄せて見せる。
「へえ、母さん、見てやって下さい――こんなに奇麗に成りましたよ」とお種が笑った。
「まあ……」とお雪も笑わずにいられなかった。「房ちゃんは色が黒いから、真実《ほんと》に可笑《おか》しい」
 暫時《しばらく》、お種はそこに立って、お雪の方を眺めていたが、終《しまい》に堪え切れなくなったという風で、こう言出した。
「お雪さん、そんな田舎臭い束髪を……どれ、貸して見さっせ……私は豊世のを見て来たで、一つ東京風に結ってみて進《あ》げるに」
 お房は大きな口を開きながら、家の中を歌って歩いた。


 南の障子に近いところは、お雪が針仕事を展げる場所である。お種はお雪と相対《さしむかい》に坐って、余念もなく秋の仕度の手伝いをした。障子の側は明るくて、物を解いたり縫ったりするに好かった。
「菊ちゃん、伯母さんにその写真を見せとくれ――伯母さんは未だよく拝見しないのが有った」
 お種は子供が取出した幾枚かの写真を受取った。お雪が生家《さと》の方の人達の面影《おもかげ》は順々に出て来た。

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