の口を開いた。
「ああ、オイシかった」とお房は香煎《こがし》の附いた口端を舐め廻した。
「房ちゃんも菊ちゃんも頂いて了ったら、すこし裏の方へ行って遊んで来るんですよ。母さんが何していらっしゃるか、見てお出なさい――母さんは御洗濯かナ」
「伯母さん、復た遊びましょう」とお房が言った。
「ええ、後で」とお種は笑って見せた。「伯母さんは父さんの許《とこ》で御話して来るで――」
子供は出て行った。
三吉はその年の春頃から長い骨の折れる仕事を思立っていた。学校の余暇には、裏の畠へも出ないで、机に向っていた。好きな野菜も、稀《たま》に学校の小使が鍬《くわ》を担《かつ》いで見廻りに来るに任せてある。
「三吉さん、御仕事ですか」とお種は煙草入を持って、奥の部屋へ行った。彼女は弟の仕事の邪魔をしても気の毒だという様子をした。
「まあ、御話しなさい」
こう答えて、弟は姉の方へ向いた。丁度お種も女の役の済むという年頃で、多羞《はずか》しい娘の時に差して来た潮が最早身体から引去りつつある。彼女は若い時のような忍耐力《こらえじょう》が無くなった。心細くばかりあった。
「妙なものだテ」とお種が言出した。この
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