ません――そのかわり、何にも御馳走は有りませんぜ」
「御馳走なぞが要《い》らずか。この節では、お前さん、一週間に一度ずつ森彦の旅舎《やどや》へ行って、新聞を読んで、お風呂に入れて貰って、夕飯を振舞って貰っては帰って来る。それより外に何にも楽みが無い――私は今、そういう日を送ってる」
 豊世は姑から細い銀の煙管《きせる》を借りて、前曲《まえこご》みに煙草を燻《ふか》してみながら、話を聞いている。
「伊東に居た時分も、お前さん、他《よそ》の奥様なぞが橋本さんは御羨《おうらやま》しい御身分だ、こうして毎日遊んでいらしっても、御国からは御金を送って来るなんて――他《ひと》は何事《なんに》も知りませんからネ……」
 こういうお種の調子には、存外|沈着《おちつ》いたところが有るので、三吉も心配した程では無いと思って来た。弟は話を進めようとしたが、それを言う前に、自分の方のことを持出した。学校の暑中休暇を機会として、名倉の家まで行く積りだと話した。
「先頃お雪さんが出ていらしった節は、実の家の方で御一緒に成りました」とお種が言った。
「私はネ、叔父さん」と豊世は引取って、
「このお宿でお雪叔母さんに
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