とも一緒に成れた」と三吉が姉に言った。
「そうも思いましたがネ、あんまり多勢で押掛けても気の毒だと思って――」
「叔父《おじ》さん、昨晩は失礼いたしました」
 と豊世は「叔父さん」を珍しそうに言う。
「私達は今、面白い二階に居ますよ」とお種は女持の煙草入《たばこいれ》を取出しながら、「お前さんなぞが上って見ようものなら、驚く位だ。一つ部屋に、応接間もあれば、ランプ部屋もあれば、お勝手もある……蚊が出て困ると言って、実の家から蚊帳を借りたは好かったが、釣ってみると部屋一ぱいサ。環《かん》を釘《くぎ》へ掛けても、まだダクンダクンしてる……笑ったにも何にも……」
「そういう思いもしてみるが好う御座んす――」と三吉が言った。
 お種と豊世とは顔を見合せた。やがてお種は一服やって、「私もネ、長いこと伊東の方に居ました。森彦の親切で、すっかり保養も出来たで……是頃《こないだ》お雪さんから手紙を下すったように、もしお前さんの許《とこ》で私を呼んでくれるなら、行って子供の世話でも何でもしてやるわい」
「まあ、暫時《しばらく》私の方へ来ていて御覧なさい――姉さんには田舎《いなか》の方が静かで好いかも知れ
前へ 次へ
全293ページ中251ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング