帰りました。もう旦那さんが有ります」
「早いものだナ。若い人のズンズン成人《しとな》るには魂消《たまげ》ちまう――兄貴の家の娘なぞも大きく成った――そう言えば、俺《おれ》の許《とこ》のやつも、来年あたりは東京の学校へ入れてやらなきゃ成るまいテ」
 水色のリボンで髪を束ねた若々しいお愛の容子《ようす》を眺めながら、森彦は国の方に居る自分の娘達のことを思出していた。
「お愛さん、貴方はもう御帰りなさい。保証人の方へ廻って、認印《みとめ》を貰って行ったら可いでしょう」
 と三吉に言われた、お愛は娘らしく顔を紅めて、学校の方へ帰る仕度をした。
 間もなく三吉は兄と二人ぎりに成った。森彦は夏羽織を脱いで、窓に近く胡坐《あぐら》をかいた。達雄や実の噂《うわさ》が始まった。
「いや、エライことに成って来た。四方八方に火が点《つ》いたから驚く」と森彦が言出した。
 三吉も膝《ひざ》を進めて、「しかし、橋本の方なぞは、一朝一夕に起った出来事じゃないんでしょうネ。私が橋本へ行ってた時分――あの頃のことを思うと、ナカナカ達雄さんも好く行《や》っていましたッけがナア――非常な奮発で。それともあの頃が一番好い時
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