代だったのかナア」
「なにしろ、お前、正太の婚礼に千五百両も掛けたとサ。そういうヤリカタで押して行ったんだ」
「姉さんなぞが又、どうしてそこへ気が着かずにいたものでしょう」
「そりゃ、心配は無論仕ていたろうサ。細君が帯を欲しいと言えば帯を買ってくれる、着物が欲しいと言えば着物を買ってくれる――亭主に弱点《よわみ》が有るからそういうことに成る。姉さんの方ではそうも思わないからネ。まあ、心配はしても、それほどとは考えていなかったろうサ」
 好い加減にこういう話を切上げて、三吉はこの兄の直接関係したことを聞いてみようとした。達雄のことに就《つ》いて、尋ねたいことは種々あった。先《ま》ず夕飯の仕度を宿へ頼んだ。


 この町中にある旅舎《やどや》の二階からは、土蔵の壁、家の屋根、樹木の梢《こずえ》などしか見えなかった。しかし割合に静かな座敷で、兄弟が話をするには好かった。
「どうして達雄さんのような温厚《おとな》しい人に、あんな思い切ったことが言えたものかしらん」こう森彦が言出した。「そりゃお前、Mさんと俺とでわざわざ名古屋まで出張して、達雄さんの反省を促しに行ったことが有るサ」
「よくまた名
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