》と嫁とは窮屈な二階で一緒に成った。階下《した》に住む夫婦者は小売の店を出して、苦しい、忙しい生活を営みつつある。しかし心易い人達ではあった。
「何にしても、これはエライところだ」とお種はすこし落付いた後で言った。「でも、豊世――伊東で寂しい思をしながら御馳走《ごちそう》を食べるよりかも、ここでお前と一緒にパンでも咬《かじ》る方が、どんなにか私は安気なよ」
 伊豆の方で豊世が見た時よりも、余程姑の容子《ようす》に焦々《いらいら》したところが少なく成ったように思われた。で、豊世もすこし安心して、自分の生家《さと》――寺島の母親が丁度上京中であることを言出した。この母は療治に出て来て、病院の方に居るが、最早《もう》間もなく退院するであろうと話し聞かせた。
「あれ、そうかや」とお種は切ないという眼付をした。「私は寺島の母親《おっか》さんには御目に掛れない」
「関《かま》わないようなものですけれど……」と豊世は言ってみた。
「お前は関わないと思っても、私が困る……第一、お前をこんな処に置いて、寺島の母親さんに御目に掛れた義理じゃない……」
 その時、お種は自分の留守へ電報を打って寄《よこ》した
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