ラした。
二階の広間には種々《いろいろ》な浴客が集って来た。その日はこの温泉宿に逗留《とうりゅう》しているものばかりでなく、他《よそ》からも退屈顔な男女が呼ばれて来て、一切無礼講で遊ぶことに成った。板前から女中まで仲間入を許された。
賑《にぎや》かな笑声が起った。隠し芸が始まったのである。若い娘や女中達は楽しそうに私語《ささや》き合ったり、互に身体を持たせ掛けたりして眺めた。こういう時に見せなければ見せる時は無いと思うかして、芸自慢の人達は我勝にと飛出した。中には、喝采《かっさい》に夢中に成って、逆上《のぼせ》たような人も有った。
この光景《ありさま》を見て来て、廊下伝いに豊世は部屋の方へ戻ろうとした。林の細君に逢った。
豊世は気が気で無いという風に、「奥さん――母親さん達は大丈夫なんでしょうかねえ。何だか私は心配で仕様が有りません」
「私共の祖母さんが太夫さんなんですトサ」と林の細君は肥満した身体を動《ゆす》りながら笑った。
「母親さんもネ、家の方のことを心配なさり過ぎて、それであんなに気が昂《た》ったんじゃないかと思いますよ――母親さんには無い事ですもの……」
「でも、橋本
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