嘉助もどうしたかサ」
「こういう時には、年をとった者は何の力にも成らない……殆《ほと》んど意見が立てられない」
 お種が掘って聞こう聞こうとするので、なるべく正太はこういう話を避けようとした。その時、お種は達雄の行衛《ゆくえ》を尋ねた。
「途中で父親さんから実印を送って寄しました。それが最後に来た手紙でした。多分……支那の方へでも行く積りらしい……」こう正太は言い紛《まぎら》して、委《くわ》しいことを母に知らせまいとした。
「一旗《ひとはた》挙げて来る気かいナア」
 と母が力を落したように言ったので、思わず豊世は胸が迫って来た。女同志は一緒に成って泣いた。


 正太は母の側に長く留ることも出来なかった。伊東を発つ日、彼は母だけ居るところで、豊世の身の上に起った出来事を告げた。
 聞けば聞くほど、お種は驚愕《おどろき》の眼を※[#「※」は「目へん+登」、第3水準1−88−91、165−19]《みは》った。夫が彼女のもので無くなったばかりでなく、嫁まで彼女のものでは無くなりかけて来た。
 正太は簡単に話した。父の家出が世間へ伝わると同時に、豊世の生家《さと》からは電報を打って寄した。それ
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