っても済むじゃないか」
とお雪は下婢の前に立って言った。隣家《となり》では朝から餅搗《もちつき》を始めて、それが壁一重隔てて地響のように聞えて来る。三吉の家でも、春待宿《はるまつやど》のいとなみに忙《せわ》しかった。門松は入口のところに飾り付けられた。三吉は南向の日あたりの好い場所を択《えら》んで、裏白だの、譲葉《ゆずりは》だの、橙《だいだい》だのを取散して、粗末ながら注連飾《しめかざり》の用意をしていた。
貧しい田舎教師の家にも最早正月が来たかと思われた。三吉は、裏白の付いた細長い輪飾を部屋々々の柱に掛けて歩いたが、何か復た子供のことでお雪が気を傷《いた》めているかと思うと、顔を渋《しか》めた。三吉の癖で、見込の無い下婢よりは妻の方を責める――理窟《りくつ》が有っても無くても、一概に彼は使う方のものがワルいとしている。だから下婢が増長する、こうまたお雪の方では残念に思っている。
「そりゃ、お前が無理だ」と三吉はお雪に言った。「未だ彼女《あれ》は十五やそこいらじゃないか――子供じゃないか――そんなに責めたって不可《いけない》」
「誰も責めやしません」とお雪はさも口惜《くや》しそうに
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