かく》祝おうとした南瓜も蕗味噌も碌《ろく》にお雪の咽喉《のど》を通らなかった。
「母さんは御飯が何処へ入るか分らない……」
お雪はすこし風邪《かぜ》の気味で、春着の仕度を休んだ。押詰ってからは、提灯《ちょうちん》つけて手習に通って来る娘達もなかった。お雪が炬燵《こたつ》のところに頭を押付けているのを見ると、下婢《おんな》も手持無沙汰の気味で、アカギレの膏薬《こうやく》を火箸《ひばし》で延ばして貼《は》ったりなぞしていた。
寒い晩であった。下婢は自分から進んで一字でも多く覚えようと思うような娘ではなかったが、主人の思惑《おもわく》を憚《はばか》って、申訳ばかりに本の復習《おさらい》を始めた。何時《いつ》の間にか彼女の心は、蝗虫《いなご》を捕《と》って遊んだり草を藉《し》いて寝そべったりした楽しい田圃側の方へ行って了った。そして、主人に聞えるように、同じところを何度も何度も繰返し読んでいるうちに、眠くなった。本に顔を押当てたなり、そこへ打臥《つッぷ》して了《しま》った。
急に、お房が声を揚げて泣出した。復《ま》た下婢は読み始めた。
「風邪を引いてるじゃないか。ちっとも手伝いをして
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