わ》を手に提げて、よろよろしながらその梯子を上った。お雪や下婢は笑って揺れる梯子を押えた。


「どうも、御無沙汰《ごぶさた》いたしやした」こう言って、お房の時に頼んだ産婆が復た通って来る頃――この「御無沙汰いたしやした」が、お雪の髪を結っていた女髪結を笑わせた――三吉は東京に居る兄の森彦から意外な消息に接した。
 それは、長兄の実が復た復た入獄したことを知らせて寄《よこ》したもので有った。その時に成って三吉も、度々《たびたび》実から打って寄したあの電報の意味を了解することが出来た。森彦からの手紙には、祖先の名誉も弟等の迷惑をも顧みられなかったことを掻口説《かきくど》くようにして、長兄にしてこの事あるはくれぐれも痛嘆の外は無い、と書いて寄した。
 三吉は二度も三度も読んでみた。旧《ふる》い小泉の家を支《ささ》えようとしている実が、幾度《いくたび》か同じ蹉跌《つまずき》を繰返して、その度に暗いところへ陥没《おちい》って行く径路《みちすじ》は、ありありと彼の胸に浮んで来た。三吉が過去の悲惨であったも、曾《かつ》てこういう可畏《おそろ》しい波の中へ捲込《まきこ》まれて行ったからで――その為に
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