と称する蕈《きのこ》の塩漬などを試みながら、「僕は碓氷《うすい》を越す時に――一昨日《おととい》だ――真実《ほんと》に寂しかったねえ。彼方《あそこ》までは何の気なしに乗って来たが、さあ隧道《トンネル》に掛ったら、旅という心地《こころもち》が浮いて来た。あの隧道を――君、そうじゃないか――誰だって何の感じもしないで通るという人は有るまいと思うよ。小泉君が書籍《ほん》を探しに東京へ出掛けて、彼処を往ったり来たりする時は、どんな心地だろう」
客を見送りながら、三吉は名残《なごり》惜しそうに停車場まで随《つ》いて行った。寒く暗い停車場の構内には、懐手《ふところで》をした農夫、真綿帽子を冠《かぶ》った旅商人、それから灰色な髪の子守の群などが集っていた。
西と三吉とは巻烟草《まきたばこ》に火を点けた。記者もその側に立って、
「僕が初めて西君と懇意に成ったのは、何時《いつ》頃だっけね。そうだ、君が大学へ入った年だ。僕はその頃、新聞屋仲間の年少者サ――二十の年だっけ――その頃に最早天下の大勢なんてことを論じていたんだよ」
「今は余程《よっぽど》分っていなくちゃならない――ところが、君、やっぱり
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